前田一樹

 

前田一樹氏は、松本在住の青年。彼がブックパッカーのアンテナサイトに現れたのは、8月。以来足繁く通ってくれて、11月にはアンテナサイトで開催したブックパッカーにも参加してくれた。

不登校児のフォローを専門とする教師であり、ヨガのインストラクターであり、森を守る活動にも携わり、今を知るための自主上映会や勉強会も開催する。「さまざまな活動に取り組む自分をひとつのアイテムで紹介できるツールがほしい。」そんな相談を受けて、まず、名刺を制作した。

彼は、自分の活動の総称を「ソラトキ」と名づけている。今回の制作にあたって、それがどんな意味をもつのか、言語化することからはじめた。ひとは自分の仕事や働きがいったい何であるのか、実は明確に意識できていない。デザインと聞くとパソコンの作業だけを連想されるかもしれないけれど、全体の作業のなかでもっとも重要な位置を占めるのが、クライアントの思いと現状がどんなものであるかを把握し、よりシンプルな言葉で表現する作業だ。今回、それにおよそ1ヶ月。最終的にまとまったテキストが左。

このテキストは、名刺の裏面に入っている。彼のこうしたコンセプトを柱にロゴマークのデザインをはじめ、当初はネイティブ色の強いデザインを提案。本人も気に入ってくれていたのだけれど、最終プレゼンで、まったく系統の異なるこのロゴマークを並べた。自然や霊性、哲学に身近な彼にネイティブなデザインはぴったりだったが、それゆえに面白みに欠けた。ある晩、悶々としていると、あるダジャレが閃いてしまった。「そらとぶひこうき」だ。

ロゴマークのモデルは、空飛ぶ飛行機。「(そ)(ら)(と)ぶひこう(き)」で「ソラトキ」。その名前からイメージされる「空と樹」には、もうひとつユーモアさがなかったから、このちょっとくだらないダジャレがちょうどいいと思った。平面の三角形を2枚重ねただけでできあがるシンプルさも好評価。今後彼が活動するにあたって、このロゴマークの使い方のパターンも構想してある。

自分の翼で大いなる心の空を飛ぶ飛行機。自然とともにあり、広い視野で世界を見渡しながら、自ら決め、動く。これから前田一樹氏はこの名刺とともに飛び回る。請われれば、どこへでもまっすぐに駆けつける。青空に白い雲を棚引かせて飛ぶ彼の勇姿を見守ってゆきたい。

 

 

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