Scotland #07

 

日本に残してきた妻の、二度目の手術が無事終わった。靭帯を固定していたボルトを抜いた。これを抜かないと稼働域がなくリハビリにならないのだ。近いうちに歩けて、さらには走れるようになって、怪我したことすら忘れるくらいになったときのために、水着でも買っていくよと打診したら、断られた。一昨年Brazilに行ったときも土産に極小ビキニを買ったのだけれど、一度も着てもらっていない。今回はビキニじゃなくて上から下までつながっているやつだよと説明したら、余計着るタイミングないわと断られた。ちなみに買おうと思っているのは、このディスプレイされている水着。可愛いじゃないか。勝手に買っていくかもしれない。今日は、展示にロンドンから日本人がやってきた。なんと、妻の幼馴染みだ。妻が連絡してくれたのだという。(この感謝の気持ちをやっぱり水着で、と心を決める)ワーキンホリデーを利用してLondonへ、語学学校に通いながら、今後2年間のUKでの暮らしかたやビジョンを定めようとしている。妻の幼少の話、今日に至る互いの経緯、描いているこれからなどを話して別れた。とても心優しい人だった。夜は、Edinburgh Station近くのThe Fruitmarket Galleryで開催されていたTania KovatsというアーティストのExhibitionとTalkへ参加。本人が来るのかと思ったら来ないし、詩人かと思いきや帰宅後Webをみると“Artist”と書かれていたので違ったらしいが、Talkではおそらく名の知れた詩人が詩を読んでいた。案内文を読み間違えたり、聞き取れなかったりで、実際は行き当たりばったりなのだ(笑)。でもTaniaのアートはとてもexcitingなものばかりだった。このギャラリーでもいい出会いがいくつかあって、宝物にしたい。帰り道、歩いていたら道ばたの小さなスロープをうっかり外してしまって、えいやと直して歩きはじめたら、通りの向こうから髭をゆさゆさと揺らした外国人(いや、この場合ぼくが外国人なのだ)が近寄ってくる。お、初めての危機到来かと身構えたら、It was so nice to fit the slope! You’re nice guy! と褒められた。そのまま足早にぼくを追い越して彼は行ってしまって、急いで写真を撮った。彼はきっと天使だったと思う。誰かが、きっと見ていてくれている。そのことを期待しているときにはぼくらはいまだ霧のなかだが、本当に自分を真摯に生きているときにふと、誰かが声をかけてくれたりする。教えてくれる人もいない、通るべき轍もない「詩を書き売る」という原野で毎日必死に生きていると、ときおり、本当に稀に、そんな幸福に出会うことがある。生きている喜び。それを感じられる人生の途上にいて、正直にいま、嬉しい。

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