詩集『空き地の勝手』大公開

 

詩集『空き地の勝手』は、詩集には珍しい変型サイズ。縦は135mm(iPhoneよりもほんの気持ち長い)、横は210mm(ちょうどA4用紙の短辺の長さ)。あまりに浅い本棚でない限りは、本棚からはみ出すことなく、しっくり収まるはず。

表表紙は、詩集ではまたまたちょっと珍しい(?)写真仕立て。このちょっと可笑しな写真、詩集用にロケをしてまで撮影しました。手にとったとき、ププッと噴き出してもらえたら幸いです。

この愉快な写真を撮ってくれたのは、いまや全国規模のムーブメントとなった「100万人のキャンドルナイト」のイメージビジュアルを担当する写真家・伊藤菜衣子(@SaikoCamera)。表表紙のビジュアル撮影の様子は、また別のページでご紹介します。

 

 

 

裏表紙は、シンプルに真っ白。リトルプレスですが、さまざまな流通もできるように可能性を整えておきたかったので、出版者コード・図書コードを取得、ちゃんと印字しました。

表紙に使用した用紙は「Mr.Bホワイト/180kg」。ややラフな紙表面とインキが乗った面のグロス感の対比がグッとくる風合いを醸し出してくれます。印刷所の担当者との打ち合わせでは、写真の緑部分の色が沈んでしまうのではとの懸念の声も一時出ましたが、ぼくはこれくらいの多少の粗さはむしろ好きなので、そのままGOサインを出しました。

 

 

 

見返し紙は、紙質・色合いともに最後の最後まで迷いましたが、最終的にチョイスしたのは「NTラシャ青緑/130kg」。明るすぎず、暗すぎず、落ち着きもあって、でもポップに遊ぶことも厭わないようなバランス感覚を信じて。

 

 

 

厚さは5mmを若干下回ります。タイトル・著者名・出版社名もしっかり記載。

たいていの本は縦に長いサイズのものが主流です。今回、もしそのような形を採用すれば、ページ数も増え、厚みもより出たかと思います。でも、どうしてもこの「横長変型」サイズにしたかった。それは、詩の文字量に関係しています。

小説やエッセイほどの長さがないいっぽうで、俳句や短歌のような極端な短さもなく、というより、短くても長くても詩は詩なんです。そういうフォーマットとは無関係のところに詩という表現は存在しています。また、ぼくは、詩一編のなかで描く空気感が散らばることを避けたいとも思いました。

そこで、短い詩でも長い詩でも、それぞれの詩の空気を散らばらせてしまわぬように紙面にデザインするためには、本をパッと見開いたときに一編が収まるサイズにするのが最適だと考えたのです。そうしてできた本のなかの空間が、下の写真。

 

 

一般的な本の型ではだいたい3〜4ページになる詩が、見開きに収まります。

正直に告白すると、このスタイルには、通常の本の型では生まれるだろう、ページをめくることによる物語への没入が薄くなるのでは、という懸念もありました。が、二兎追うものは一兎も得ず、今回はチャレンジする道を選んだ。

 

 

比較的長い詩は、もちろんページを跨ぎます。その場合も、これだけの余白を贅沢にとることができる。一編ずつ一つの空気感をググっと作り込まれた詩を読んでいく上で、この余白はちょっとしたインターバル、中休みになる。第一楽章から第二楽章へ移る際に、コンサートホールにすっと生まれる息継ぎの間のような。構想段階ではあまり意識していなかった効果で、印刷のための見本誌を制作している過程でその美しさに気づいて、嬉しい発見でした。

 

 

 

本文紙は「OKアドニスラフ80/73kg」。この「80」は白色度が80%であることを意味しています。手にとっていただければ実感していただけると思いますが、温かみのある白さが特徴的です。紙自体が厚めにできている用紙なので、連量が73kgと小さくても、十分な厚さを保っています。

使用したフォントは、漢字が「こぶりなゴシック W3」、仮名が「KOはなぶさ M」。仮名フォントが漢字フォントに比べて小さいので、「KOはなぶさ M」は108%とサイズを拡大。小説のような長文になると、この合成フォントの連続は読みづらいかもしれませんが、詩のように一文が短い文章には、とても効果的でした。

また、各ページのノンブル、奥付や表表紙の英数字には、1725年にデザインされ、以後細部のリデザインが施されてきた古い書体「Caslon」のうち、「Big Caslon」を使用しています。

 

 

この詩集には、してきなしごとのテーマでもある「会って、話す」という目的があります。そのコンセプトからすると、ぼくの考えやイメージを詩という表現に寄せて一方的に届けるだけでは物足りなかったので、今回、「案内冊子」と「読者カード」を合わせて制作し、各販売書店で並ぶ際には、すべて挟み込まれています。

 

 

 

詩集に綴じられた作品群の凝縮した世界を読みながらも、ふっと息を抜く間をとっていただけたらと、案内冊子と読者カードは、文字もイラストもラインも、すべて手描きで制作しました。読んで感じたこと、考えることなど、ぜひ送っていただけたら幸いです。

 

 

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